小野国際社会保険労務士事務所

アジア各国で終わった人口ボーナス期

皆さんこんにちは、小野です。

今回はアジア主要各国で終わったとされる、「人口ボーナス」について
お話させていただきたいと思います。

まず「人口ボーナス」とは?

ウィキペディアでは、以下のとおり定義しています。
「労働力増加率が人口増加率よりも高くなることで、経済成長が後押しされる状態」
要するに、「子供と高齢者の数に比べて、働く若者世代の割合が増えていくことによって、
経済成長が活性化される状態」です。
(※この反対の現象を、「人口オーナス」といいます。)
労働力人口とは、労働の意思と労働可能な能力を持った15歳以上の人のことを指します。

人口ボーナス期が終焉すると、一人当たりGDPは人口ボーナス期のような大きな伸びを
見せなくなります。

実はこの人口ボーナス、2015年前後に既にアジア主要各国で終焉を迎えています。

日本  1995年←25年以上前(=四半世紀前)に終わっています、、、
韓国  2015年
香港  2015年
中国  2015年
台湾  2015年
シンガポール  2015年
タイ      2015年 (゜д゜)!
ベトナム    2020年
インドネシア  2025年
フィリピン   2045年

かつて「アジアの四小龍」と言われ、日本を追って1960年代以降に目覚ましい経済発展を遂げた
韓国、香港、シンガポール、台湾の人口ボーナス期は終焉を迎えています。
※4カ国とも諸説ありますが終焉が全て2015年前後なので、統一し2015年としています。
一方でフィリピンやインドネシア(特にフィリピン)は今後も人口ボーナス期が続くと言われており、
投資する際の一つの大きなプラス材料となっています。

しかし、、、
ちょっと待った・・・!!
2015年にタイが!?

そうなんです。

タイの人口ボーナス期は既に終わっており、人材不足は慢性的な問題として今後解決されることはなく、
むしろますます深刻なものとなっていきます。

更にタイは2022年には高齢化率が14%、2030年には20%に近づき、2050年には30%以上に
のぼると予想されています。
高齢化のスピードは日本に比べれば随分と緩やかですが、実は事態は日本より深刻です。

これまで先進国(アジアの小四龍含む)においては、人口ボーナス期に豊富な労働力で経済を
成長させてきました。やがて豊かな生活と社会インフラを手にした後に少子化が進み、
「人口オーナス期」に入って経済成長が鈍化する、というのが一般的な理論として通ってきました。

しかしタイは人類史上初(?)、この説明が当てはまらない国となります。
人口ボーナスが終わったとされる2015年のタイの一人当たりの名目GDPは5,800ドル。
ちなみに日本は人口ボーナス終焉時の1990年代前半は、一人当たりGDPは30,000ドルを超えています。
同じく2015年の韓国は27,000ドル、シンガポールは53,600ドル、台湾は22,300ドル、香港は42,300ドル。

https://bit.ly/3e7HYI9 ←参考グラフを生成してみました。

※様々な定義がありますが、一応先進国の目安の条件の1つとして、
 一人あたりGDPが20,000ドル超というものがあります。

数字を見るだけでも恐ろしいですが、タイは人口ボーナス期に所得や生活がある程度豊かにならずして、
人口オーナス期を迎えました。経済成長期に十分なインフラを整備できないまま、高齢化社会に突入
してしまいました。

為替をはじめとする経済の予測は一般的に非常に困難ですが、
人口推移に関しては、大規模な戦争でも起きない限りは簡単に予測がつきます。

日系企業の進出が既に頭打ちとなったタイ。
タイにおいては、単純労働者を中心に周辺ASEAN諸国からの人材の受け入れは今後も加速し続ける
ものと思われますし、在タイ日系企業は、「人口」というこの予測可能な状況を見据えた上で、ASEANを
一つの地域として捉えるのは勿論のこと、ますます予測が困難な未来の情勢に臨機応変に対応しうる組織
体制の構築が、あらゆる業種において今後更に必要になってくるものと思われます。

個人的には将来のタイのためにも、日タイのパートナーシップのもと、例えば介護・福祉分野で
タイ&ASEANの人材をどんどん日本に送って経験を積ませ、そういったプロの人材が、
未来のタイでの高齢化社会の中心となり活躍する、という好循環システムが出来れば
素晴らしいなと思っているのですが、残念ながら日本の法整備と日本人特有の
「外国人人材に対する心理的な壁」が全く追いついておらず難しそうです。

皆さんはこの問題をどのように考えられますでしょうか・・・?

本日も最後まで読んでいただきありがとうございました。(小野)