小野国際社会保険労務士事務所

ルールと信頼のバランス

おはようございます、小野です。

タイに新たに赴任された方から、「現地スタッフとの価値観の違いに戸惑う」という声を
よく耳にします。例えば、会社のルールを守る意識の違いや、遅刻に対する感覚など、日本では
当然とされていることが、タイでは必ずしも同じように受け取られないことがあります。

このような違いに直面したとき、我々はつい「正しい行動」や「組織としての秩序」を重視して
しまいがちです。もちろん、一定のルールや規律は組織を円滑に保つために必要ですが、それを
タイ人スタッフにも当然のこととして求めすぎると、かえって関係性がぎくしゃくしてしまうことがあります。

日本では、他人からの信頼を裏切らないように行動することが美徳とされ、自分の立場や役割を
果たす責任感が強く根づいています。周囲の目を気にしながら、空気を読み、調和を大切にする
文化です。そのため、「みんなが守っているのだから、あなたも守るべきだ」という同調圧力が強く
働きやすく、時にそれが「戸惑い」や「不信感」にもつながってしまいます。

一方、タイでは、個人の自由やその時々の事情を尊重する傾向があり、人と人との関係もフラット
で寛容な部分があります。もちろん、タイ人スタッフも職場での責任は理解していますが、
「人は完璧ではない」 「失敗しても仕方ない」という柔らかい価値観が根底にあるように感じます。

このような文化的背景の違いを理解することが、タイでのマネジメントにおいて非常に重要です。
ルールを守ることを重視する日本的な感覚だけでは、現地のスタッフと良い信頼関係を築くのは
難しいかもしれません。

そこで有効なのが、「性悪説でルールを設け、性善説で運用する」という考え方です。
つまり、制度や仕組みは、人は時に過ちを犯す存在であるという前提で整備しつつ、実際の運用に
おいては、相手を信頼し、尊重しながら対応するというスタンスです。

たとえば、勤怠管理のルールは厳格に設けておきながら、スタッフが遅刻したときは、まず事情を
丁寧に聞き、相手の背景を理解することに努める。あるいは、ルールの運用についても一方的に
押し付けるのではなく、スタッフと対話を重ねながら、改善策を一緒に考えるという姿勢が大切です。

異文化の中で働くということは、時に価値観の衝突を生みます。しかし、相手の文化的な前提や
考え方に敬意を持ち、自分自身のものの見方も柔軟に調整することで、きっとより良い関係が
築けるはずです。異なる文化を知り、違いを受け入れ、ともに働く。その積み重ねこそが、真の信頼
関係を生み出す第一歩だと思います。

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。